外観デザインをカッコよくしたい人へ。建築士が教える家の外観を整えるコツ5選
2022.09.21
家づくり相談室スタッフブログ
Writer
森瀬 将文 一級建築士
注文住宅を建てるなら、毎日家に帰るのが楽しくなるような、おしゃれな家にしたいと思う方も多いのではないでしょうか。
「おしゃれ」とか「かっこいい」という価値観や好みは人それぞれではあるものの、「自分の趣味とは違ってもオシャレでカッコいいのは分かる」という家が世の中にはたくさんありますよね。
そんな家にはデザインの幅はあれど、共通のルールが存在します。
そこでこの記事では、プロが外観をデザインするときに気にしている具体的なコツについてお伝えします。
理想の家のイメージを実現したい、おしゃれに見せるコツが知りたいという方はぜひ参考にお役立てください。
1・間取りと外観は同時進行で考える
家づくりでよくあるのは、敷地に対して間取りから考えて、そこからできた外観に装飾等加えて整える方法です。
そうすると希望の間取りや動線計画や通風採光を優先して考えることができますが、「外観デザイン」という視点から見ると、家のカタチが間取りなりに決まってしまっているので、その状態から外観をカッコ良くするというのは難易度が高くなります。
また、その敷地でできる最良の間取りになったとお客様ご自身が思っている場合は、そこから外観のために間取りを削ろうとか大きく変えようという気持ちにはなれず、外観はある程度整えたらヨシとするという方向になる事が多いですね。
これを防ぐには、間取りを考える際に、この平面図だとどんな外観になるのかを常に意識する事が大切。
平面図だけでしか打ち合わせをしておらず、外観を考えてくれているのか分からないという場合は、その間取りを作ってくれている設計士さんに聞いてみてください。そうすることでこのお家の外観の優先順位が高い事のアピールになり設計士さんの意識も変わります。予算配分にも関係してくるので外観への要望を早めに伝える事は悪い事ではありません。
また、先にイメージの外観を設計士さんに伝えておく事も大切ですよ。
2・窓=外観 ということを忘れない
内観と外観同時に考えるという事とつながっていますが、窓のラインを揃えたり、配置のバランスを取る事は大切です。
例えば、トイレに小さな窓が欲しい…など間取りを優先した外観は、窓があちらこちらにバラバラについていてカッコいいとはいえない…。と言う現象はとてもよく起こります。
例えば、こちらのお家は木の壁部分に窓は一つもありませんが、この部分にあたる居室は寝室のため、本来間取りだけで見ていると、採光通風等考えてこの木の部分に窓を設ける事が一般的です。ただ、この木目の迫力がある外観デザインも同時に考案していたことから、表から見えない北側に窓を配置しデザインと機能を両立しました。
「窓を無くす勇気」
先ほどはトイレの小窓を例に挙げましたが、外から見える顔となる面にバラバラの窓を設けるくらいならいっそ省いてしまうというのも外観をスッキリ見せるコツになります。どうしても小窓をいくつも目立つ面につけたい場合はせめて高さや位置を揃えるといいですね。
3・色と素材に気を遣う
外観を構成する主な要素は、「壁・屋根・窓」です。ここを塗り壁にしたり、天然木を使ったりすると一気に家に表情が加わります。このような素材は経年変化をするので、メンテナンスが気になる方も多いですが、プリントされている物と違って自然な表情や味わいが常に変わりつづけるので飽きがこず楽しいですよ。
また、外観の色決めも皆さんとても悩むポイントです。このサンプルの色が外壁の面積になったときの想像がつかない事がほとんどで、尚且つ光の当たり方でも全く違って見える。イメージが違っても簡単に塗りなおしが出来る金額の工事でもありません。そんな時は弊社のオーナーさんなどのすでに建っている理想に近い外壁の色とサンプルの色とを見比べてみたり参考にさせていただくのはよくある手法です。ご近所の方の外壁リサーチをする方もいらっしゃいますよ。
また、外壁の目地を消すというのもポイントです。
こちらのお家も見えている面の外壁の目地は全て消しています。ただ、コストが上がってしまいますので、人が通る道路側の1面だけを目地消しにする方が多いですね。
4・機能と意匠の融合を意識すると美しくなる
「機能美」という言葉がありますが、雨避けのひさしなど機能のためだけに取り付ける物に意匠性を持たせたり、例えば、一見無駄に見える余白の空間が実は、ある時間になると風にゆられる葉陰が陰影と一緒に映り込むスクリーンのような意味を持ったものだったりすると、「おしゃれ」の為だけに取り付けたものとは一線を画す普遍的な「美しさ」という価値をもったデザインになります。
5・デティールまで気を抜かない
細部の仕上げで随分と印象が変わるのが建築。とても似たようなデザインの家があった時に、なぜかこっちの方がシュッとしていてカッコいいなと思う事がありますが、そういう時は細部のおさまりにまで気を配っているかという事が影響していたりします。
例えば先ほどの例にも出したこちらのお家↓
木外壁の角の仕上げを、「留め(とめ)」にしています。
また、3でも述べましたが、外観を構成する主な要素は、「壁・屋根・窓」ですが、外観を構成する脇役には「とい、ひさし、のき」があります。ここをなんでもいいと疎かにすると、「とい」がとても邪魔になるところを走ったり、ヒサシが取ってつけたままになってしまっていたり、せっかく整った外観も一気に崩れてしまう程の威力がある意外と目立つ脇役なのです。
来月完成、見学会も開催予定のS様邸にもデティールを少し気にしているポイントがあります。
この屋根と、袖壁の角がつながったデザインにするために、軒裏換気金物を最小限の幅の物を設計士が探して取り付けています。
ディテールと言うのは「細部」という意味で、お客様はこんなところまで気にしないよね?という細かな所までプロがしっかりと意識すると仕上がりの美しさがぐんと違ってきます。
ただ、ここで注意したいのは、細部にこだわろうと思うと際限がなくなってしまい、現場手間のかかる作業が増えすぎて工事費が嵩んでしまいます。ここは、一級建築士事務所でもあり工務店でもある弊社は設計と工事の両方の舵取りが出来るのが強み。ちょうどいい落としどころを見極めながらバランスを取る事も大切です。
見学会等でもこのお家の外観は何が普通と違うのか、スッキリ見える工夫は何なのかをスタッフに聞いてみたり、そういったところも見てみると面白いかもしれませんね。
最後に…
今回は外観デザインからの視点で書いていますが、快適性や間取りなど、本人が最優先したいことでまた変わっていきます。ぶつかった時にどちらを取るのかは本人の優先順位次第になりますので、一番最初にこの家に対して何を求めていて何を優先するかを家族で話し合って決めておき、迷ったときにはそこに立ち返って決めていくという事をしてみると納得して進めていくことが出来ます。
また、自分好みの外観のお家に住むのは誰しもが憧れるものですが、意識していただきたいのは、おしゃれのためだけのデザインになってしまわない事。
建築と言う奥深いデザインを表面的なデザインのものにしてしまわず、機能美などや空間美も加えた視点で設計士さんと一緒に外観デザインを打ち合わせをしてみると、そのお家での暮らしが飽きるどころか年数を重ねるごとに愛着の深まっていく、豊かなものになりますよ。
Writer
森瀬 将文一級建築士
一級建築士